片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
「冬也が私に言うのよ。キスが下手だって」


「上手くなるには慣れしかないよ。冬也に指南頼んだら?」


「冬也には頼めないわよ。私は冬也にキスが下手だって言われたくないのよ!」


「もしかして久保川は俺にキスのやり方教えてくれと言ってる?」


「別にそうは言ってないけど・・・」


「まぁ、別にいいけど。キスなんて欧米じゃ挨拶代わりだし、でもキスってHよりもキスの方が愛を感じる人が居る位カップルにとっては大切な行為だぞ。久保川」


「それでも上手くならないと」


冬也に全部負けちゃうのは悔しい、せめてキス位上手くなって。


「そこまで言うなら、こっちに来いよ」

栗原さんは立ち上がって私をソファに誘った。

ソファに並んで座ると栗原さんの方がゆるりと私の肩を抱いて、自分に引き寄せて真剣な光を瞳に宿す。


今まで、男女関係なくざっくばらんに喋れる同期としてずっと接してきたが、内心彼の見せた男の顔に焦った。



「どうした?肩震えてるぞ。久保川」

栗原さんは声音まで変え、私に迫る。

彼の低音ボイスに鼓膜が擽られどうしようもない。


「瞳瞑らなきゃキス出来ないだろ?」

彼はいつまでも瞳を閉じない私に堰を切らせて詰った。
私は瞳を閉じて栗原さんのキスを待ってると

「柾貴、泊めてくれ」


リビングのドアが開き、誰かが入って来た。


「ふ、副社長っ!?」

瞳を開けると『星凛堂』の副社長であり、稜真さんの兄の濱部拓真さんが呆然と立っていた。
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