片恋シンデレラ～愛のない結婚は蜜の味～
「俺は妻との結婚で初めて挫折を味わった・・・弟の稜真に先を越されて・・・君もきっと緑川家に嫁いだら、俺と同じプレッシャーに苦しむコトになると思うよ」


副社長は遠回しな言葉で言っているが、彼の言う言葉の意味を理解していた。


副社長と小陽さんは結婚4年目に入るが、子供は居ない。
二人よりも後に結婚した稜真さんと奈那子の間に子供が生まれた。


彼は、一族経営の『星凛堂』の次期社長で後継者である子供の誕生を望まれている。

「大学時代の友人も俺よりも後に結婚したクセにもう子供が生まれてる・・・」


彼は背中を背凭れに押し付けて頬に手を当てた。


不意に差し込んだ対向のヘッドライトの光が副社長の寂しげな横顔を照らす。


次期家元のなる冬也の元に嫁ぐとなると偽装でも、周りは次の家元となる男児の誕生を望む。


「久保川さん良ければ、俺の部屋に泊まって行かないか？」


「えっ！？いきなり、そんなコト言われても・・・」


「1ヵ月振りに帰る我が家。俺もどんな顔をして小陽に会えばいいのか…分からない。頼む。人助けだと思って・・・」



副社長は首を縦に振らない私に執拗に迫った。

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