片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
「それもそうだな」
家元は冬也の言葉に頷き、奥様を一瞥した。
「これは緑川家の名誉に関わるコトだ。すまないが、久保川さんには席を外して欲しい」
「分かりました」
「私と共に来てください。邸宅を案内致します」
奥様がゆるりと腰を上げて私を連れ添って部屋を出た。
「あの・・・『光文堂』の豆大福ありがとうございました」
「私もスキだから、よく買いに行くのよ。気にしないで」
二人で廊下を歩き、離れから本宅へと向かう。廊下の硝子戸の向うにはキチンと手入れの行き届いた日本庭園が見える。外は小雨。
シトシトと弱い雨音の中に疏水の音が一定の音を鳴らす。
「久保川さんは560年続くこの華道の家元の緑川家に嫁ぐ不安はありませんか?」
「無いと言えば嘘になります」
「私はこの緑川家に嫁ぐコトに不安を抱き、一度は結婚を止めようと思いました。でも、「案ずるが産むが易し」
当時、民間から婿入りしたばかりの亡き銀龍帝から頂いた言葉と家元の誠意で、この緑川家に嫁ぎ、もう50年以上になります」
「でも、私には華道の嗜みはありません」
「私も同じでした。結婚してから勉強していけばいいんですよ」
奥様は気安く言って、私の不安を和らげようとするけど、それは家元との間に愛が在ったからこそどんな困難も乗り越えて行けたのだと思う。
でも、私と冬也にはその愛がない。
―――――私達の結婚には愛がない・・・・
家元は冬也の言葉に頷き、奥様を一瞥した。
「これは緑川家の名誉に関わるコトだ。すまないが、久保川さんには席を外して欲しい」
「分かりました」
「私と共に来てください。邸宅を案内致します」
奥様がゆるりと腰を上げて私を連れ添って部屋を出た。
「あの・・・『光文堂』の豆大福ありがとうございました」
「私もスキだから、よく買いに行くのよ。気にしないで」
二人で廊下を歩き、離れから本宅へと向かう。廊下の硝子戸の向うにはキチンと手入れの行き届いた日本庭園が見える。外は小雨。
シトシトと弱い雨音の中に疏水の音が一定の音を鳴らす。
「久保川さんは560年続くこの華道の家元の緑川家に嫁ぐ不安はありませんか?」
「無いと言えば嘘になります」
「私はこの緑川家に嫁ぐコトに不安を抱き、一度は結婚を止めようと思いました。でも、「案ずるが産むが易し」
当時、民間から婿入りしたばかりの亡き銀龍帝から頂いた言葉と家元の誠意で、この緑川家に嫁ぎ、もう50年以上になります」
「でも、私には華道の嗜みはありません」
「私も同じでした。結婚してから勉強していけばいいんですよ」
奥様は気安く言って、私の不安を和らげようとするけど、それは家元との間に愛が在ったからこそどんな困難も乗り越えて行けたのだと思う。
でも、私と冬也にはその愛がない。
―――――私達の結婚には愛がない・・・・