片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
濱部副社長は予約制でなかなか手に入らない代物の『あけぼの堂』の最中を購入してくれた。
六本木のファションビルの3階にあるダイニングバーで待ち合わせ、最中を受け取った。


「ありがとうございます」


「あれ、久保川さんは居ないのか・・・」


「夏芽の婆ちゃんが入院したみたいで、今日は定時で仕事を終わらせて病院に向かいました」


「そうか・・・俺は良く分からないけど。お義父さんは氷見流嵯峨派の家元になったらしいから、その繫がりで仲人になったってコトか?」


「はい」


濱部副社長は気怠そうに髪を掻き上げて、ロックの焼酎を飲んだ。


「濱部副社長って誰とでも仲良くなれそうな雰囲気だし、お義父さんとも上手くやっているんでしょ?」


「小陽のお義父さんだけは別だ。まぁ、結婚当初は上手くいっていたが、最近は上手くいかない。そう言えば、正月以来、会ってない」


「半年以上会ってないってコトですか?」


「まあな。あの人とは今一つ合わないと言うか。お義母さんとは上手くいくんだけどな・・・」


濱部副社長はオックスフォード大学を卒業した超エリート。外見は理知的で稜真とは正反対の感じでとっつきにくそう見えるけど、性格は気さくで、友人も多い社交家。


「小陽はあの人の箱入り娘だったから、俺にその大切な娘を奪われた悔しさが今もあるんだよなぁ」


敦司様が娘の小陽さんを溺愛しているコトは世間では有名な話で、その小陽さんと結婚した濱部副社長を敵対するのは仕方がないかもしれない。


「5年経ってるのに子供がデキないのも・・・上手くいかない原因だ」

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