片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
**********
今週末は伊集院敦司夫妻の自宅に夏芽と一緒に挨拶に伺った。
「濱部副社長から銀座の『あけぼの堂』の最中が敦司様は大変お好きだと訊きましたので、これはその最中です」
「冬也君は拓真君と仲はいいのか?」
「え、あ・・・はい」
「私が彼を誘っても、全く誘いには乗らない。彼も仕事が忙しいのだろうと思って最近は連絡も取っていない」
敦司様は最中を受け取り、妻の陽那様に渡した。
二人の住む部屋は東京湾のオリンピック跡地として名高い東京ベイ・ランドの高級マンション。
「座りたまえ」
白髪の髪を黒く染め、低く響くバリトンボイス。
67歳には見えない出で立ち、凜とした光を持つ瞳は威圧的だった。
一国の総理を務め上げ、今は氷見流嵯峨派の家元を継承し、氷見流全派に多大な影響を与える存在の人。
副社長が敦司様に脅威を感じるキモチが少しだけ分かった。
「急な話で、こちらも多少戸惑う部分があるのだが、氷見流の未来を考えて承諾した。若い男女が共に同じ人生を歩む。それはこの国にとっても大変良いコトだと思う」
「固い話は止めましょう。敦司さん。奥様となられる夏芽さんに余計なプレッシャーを感じます」
「陽那がそう言うなら、何も言わないでおこう」
今週末は伊集院敦司夫妻の自宅に夏芽と一緒に挨拶に伺った。
「濱部副社長から銀座の『あけぼの堂』の最中が敦司様は大変お好きだと訊きましたので、これはその最中です」
「冬也君は拓真君と仲はいいのか?」
「え、あ・・・はい」
「私が彼を誘っても、全く誘いには乗らない。彼も仕事が忙しいのだろうと思って最近は連絡も取っていない」
敦司様は最中を受け取り、妻の陽那様に渡した。
二人の住む部屋は東京湾のオリンピック跡地として名高い東京ベイ・ランドの高級マンション。
「座りたまえ」
白髪の髪を黒く染め、低く響くバリトンボイス。
67歳には見えない出で立ち、凜とした光を持つ瞳は威圧的だった。
一国の総理を務め上げ、今は氷見流嵯峨派の家元を継承し、氷見流全派に多大な影響を与える存在の人。
副社長が敦司様に脅威を感じるキモチが少しだけ分かった。
「急な話で、こちらも多少戸惑う部分があるのだが、氷見流の未来を考えて承諾した。若い男女が共に同じ人生を歩む。それはこの国にとっても大変良いコトだと思う」
「固い話は止めましょう。敦司さん。奥様となられる夏芽さんに余計なプレッシャーを感じます」
「陽那がそう言うなら、何も言わないでおこう」