君の好き 私の好き 僕の好き。
そんな、春陽を好きになったわけは、その優しさだ。
入学式 早々の雨、私は水たまりの前でこけた。
自分でもびっくりだった。そんなとき、ふと前を見ると、1本の手が私に伸びていた。
とりあえず、掴んでみるとひょいっと私を持ちあげて立たせてくれた。
前を見ると、『まったく。恋夏ってば。』とでも言うような笑顔で私に笑いかけている、春陽がいた。みたことがないけれど、その笑顔はどこかなつかしかった。
それから 「大丈夫??」といって、タオルをさしだしてくれた。
あまりにもベタベタだった私を見ると、「あげるよ」といったきり、春陽は校門をでて帰っていった。
帰っていく春陽はどんどん小さくなって離れて行く。
見飽きることなんてなかった。
ただ、離れていってくれなかったのは私の心の中にある、胸のドキドキだった。