〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。
「家庭に入る事を望んでいる訳では無い。
結婚を期に仕事どうしようかとか、一緒に暮らさないといけないのかとか、選択しないといけなくなる事をしない。互いが自分を生きる。
初めはそんな関係で居られないかな」
握る手に少し力が篭った。
「人それぞれの生き方ってあると思うんだ。
だからと言って、俺はたいした生き方がある訳じゃないけど。
こうして、京と居られる。
俺はそれだけでいいんだ。
京は京の思うように生きて欲しいんだ。
急な話で、しかも、何も変わらない結婚をしようというのも突拍子も無いよな。
普通は、幸せにする、一緒になろうって言ったりするのにな。
俺は京と居られる事が幸せなんだ。俺が幸せにするから、なんて、おこがましい事は言えない。
京の幸せは、京が感じるモノだろ?
俺だけが幸せを感じても成立しない。
直ぐに返事はくれなくていいから。
後悔して欲しくないから、納得がいくまで時間をかけて考えて欲しい」
「課長…」
今まで何も決まった言葉は無かった関係だったのに。
この告白。受け入れたとして今までと何も変わらない。
何より、私の幸せを考えてくれての言葉。
私を思ってくれてる事が凄く解る。
こんな我が儘な提供を、選択してもいいんだろうか。
「京、俺は京の事、大切な人だと思っている。
こんな条件を言ってるからって勘違いして欲しく無いんだ。
一緒に暮らしたく無い訳じゃないんだ。
俺は…ご飯だって京のご飯、毎日だって食べたい。
朝、京の顔を見て、おはようも言いたいし、行ってきますも、ただいまも言いたい。
お帰りと言ってもらえると嬉しい。
でも、それを強く望む訳ではないと思っている事、解って欲しいんだ。
京自身を大事にして生きて欲しいんだ。
その上で一緒に居られたらと願っている」