〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。
車はマンションの駐車場にたどり着いた。
エンジンを止めた。
課長はシートベルトを外した。
「京…」
シートベルトをカチッと外すと静かに抱きしめられた。
シュルシュルとベルトは自然に引き上げられていった。
「この話は、今日はこれでおしまい。さあ、せっかくの二人の時間だ。上がろう」
「はい」
離れた課長は、助手席側に来てドアを開けてくれた。
「さあ…、京」
手を取ってくれた。
何だか、いつもより照れ臭い。
「有難うございます」
ドアを閉め片手に荷物を纏めて持ち、片手は私と手を繋いだ。
エレベーターに乗り込む。
ボタンを押した。
ドアが閉まる…寸前。
ハプニング発生だ。
「ちょっと待ったぁ」
長い手が差し込まれた。
「はぁ、間に合った。ごめんなさい、お邪魔しちゃって」
アヤさんだった。
「ごめんなさい、はい、ポチっと」
一つ下の階のボタンを押した。
「…康介。別にタワーマンションでも無いのに、…少しは気を遣え。後から上がればいいだろうが」
「あら、目の前のモノ、見す見す逃すなんてするもんですか。次なんて待ってられないわ」
「…何言ってる。たかがエレベーターじゃないか」
「もう、そんなことより何?熱いわね」
課長と京の間に割り込んだアヤは二人の繋がれた手を取った。
「私も繋いじゃおうかしら」
…なんだこれは。
今から試合でもあるのか。三人で手を乗せ合って。
まるで、ファイトー、いっぱ〜つ、状態じゃないか。