〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。
「ほら、着いたぞ。康介は降りた降りた」
「えー、一緒に着いて行くぅ」
ドアが閉まった。
「あ、もう…なんでだよ」
「一緒に食べる、それ」
…目敏い。
「大将のとこのでしょ?食べたい、食べたいぃ」
「課長。いいじゃないですか、ね?」
チン。…着いたし。
「はぁ…、京がいいなら、いいよ」
「やった。私が荷物持ってあげるから、二人はエレベーターでキスでも堪能してから戻って来なさい。
鍵かして、拓」
そう、何をかくそう、康介さんは、課長とも知り合いだったのだ。
康介さん、いや、アヤさんとしての康介さんは顔が広い。
世間は狭いものだ。
どうやら夜のバイト関連が知り合う元になったようだ…と私は推測している。
しかも、このマンション。
課長の真下の階の部屋に出入りしているなんて…。
違うのは、ここは康介さんの持ち物ではなく、女装家仲間の部屋だという事。
康介さんは美形の友人が多いのね。陽人といい、課長といい。
だからと言って、康介さんを介して、課長と陽人が知り合いだったという訳では無かったようだ。
プライベートに関しては口が堅いという事だろう。
しかし、鍵を使って開けて入ってしまう仲なのか。
「京、折角だから…」
部屋に帰ったら康介が暫くいるんだ。だったら今のうち…。
抱き寄せられた。
「あ、課長…駄目ですよ。人が来たら」
「…黙って」
ゆっくりと唇が重なった。食むような口づけは…駄目…腰が…。
カツカツ…。
「ちょっとー!あんた達。もう、本気にしちゃって。
拓、鍵、違うわよ」
「んぁあ?会社のだったか」
…。
「もう。いいから、拓が開けて!」
「…行くか」
「はい…」