〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。

「ほら、着いたぞ。康介は降りた降りた」

「えー、一緒に着いて行くぅ」

ドアが閉まった。

「あ、もう…なんでだよ」

「一緒に食べる、それ」

…目敏い。

「大将のとこのでしょ?食べたい、食べたいぃ」

「課長。いいじゃないですか、ね?」

チン。…着いたし。


「はぁ…、京がいいなら、いいよ」

「やった。私が荷物持ってあげるから、二人はエレベーターでキスでも堪能してから戻って来なさい。
鍵かして、拓」

そう、何をかくそう、康介さんは、課長とも知り合いだったのだ。
康介さん、いや、アヤさんとしての康介さんは顔が広い。
世間は狭いものだ。
どうやら夜のバイト関連が知り合う元になったようだ…と私は推測している。

しかも、このマンション。
課長の真下の階の部屋に出入りしているなんて…。
違うのは、ここは康介さんの持ち物ではなく、女装家仲間の部屋だという事。

康介さんは美形の友人が多いのね。陽人といい、課長といい。
だからと言って、康介さんを介して、課長と陽人が知り合いだったという訳では無かったようだ。
プライベートに関しては口が堅いという事だろう。

しかし、鍵を使って開けて入ってしまう仲なのか。


「京、折角だから…」

部屋に帰ったら康介が暫くいるんだ。だったら今のうち…。

抱き寄せられた。

「あ、課長…駄目ですよ。人が来たら」

「…黙って」

ゆっくりと唇が重なった。食むような口づけは…駄目…腰が…。


カツカツ…。

「ちょっとー!あんた達。もう、本気にしちゃって。
拓、鍵、違うわよ」

「んぁあ?会社のだったか」

…。

「もう。いいから、拓が開けて!」

「…行くか」

「はい…」
< 102 / 175 >

この作品をシェア

pagetop