〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。
ピンポン。ドンドン。
「陽人、居るか?俺だ、康介だ」
カチャ。
「陽人…」
「まあ、入れよ」
「今、帰った。俺、結局何も話せなかったよ。
二人がもどかしいのはよく解っていたのに、…結局、俺が勝手に割り込んで話しちゃいけないんだと思って」
「京と昼飯食っただけか」
「あ、ああ。飯食ってどうでもいい話をした」
あと、伝わらなかった花火の例え話だけど。
「フ。デートだな。お家デート。見方に寄っちゃ、お前とデートだよ」
「そんなつもりは無い」
「…旨かったか?何作ったんだ?
京が持ってた買い物袋、膨らんで重そうだった」
「…陽人。見たのか?」
「ああ。京が階段を下りようとするところ、ドアを開けたら見えた。
…元気そうだった」
「ああ」
「……幸せそうだったか?」
「ああ。幸せだと思う」
「そうか。……良かった」
…。
「なあ、陽人…」
「もういい。…帰れ。仕事の用意があるだろ。
…もういい」
京の事は知りたいけど、やっぱり知りたくない事もあるんだ。
元気で幸せなら、それでいい。それ以外、今はまだ知りたくない。
「陽人…」
「...何作ってもらったんだ?」
「え?...パスタだ。ほうれん草とベーコンのクリームパスタ...」
「...そうか」
京はいつもちゃちゃっと作ってくれてたな。
「ほらほら、時間なくなるぞ」
「ああ。...帰るよ」
「ああ。...康介は何も悪く無いから。有難うな」