〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。
陽人…。相変わらずね。
必要最低限の言葉だけ。…久しぶり。
私をまだそんな対象としてくれたままなの?
有難う、と返したい。
でも、今は敢えてしない。馴れ合ってはいけない。

もしも、馴れ合う事が許されるなら、それは話が済んでからだ。
ザワザワとざわつき始めた。落ち着かなくなった。はぁ、ドキドキする。

やはり陽人と言うキーワードは私の中に居続けているんだ。
会う日までこの緊張感を持ち続けなければいけないなんて。
予定は急ではいけないと早目に連絡した事、後悔した。
前日に伝えたら良かった。それでも、陽人なら都合はつけてくれただろうから。


はぁ…しっかし、寒いなぁ…。
…どこに居る、京。
人も多いし、目印もなく、こんな場所で見つけられっこなんか無いぞ…。
キョロキョロと首ごと振って探してみた。

ドーン、パラパラパラ…。

おぉ……花火だ。始まった。
一斉に人の向きが揃った。

へぇ、綺麗なもんだな…。
寒くても見る価値あるってもんだな。
付き合ってる時に、一緒に見に来たら良かったな…。
……今更だな。
夏の花火、一緒に行っときゃ良かったな。…京。


ブー…。

【花火、見てる?】

【どこに居る】

【私も見てる】

はぁ、こっちはどこに居るか聞いてるんだけどな…。

【綺麗ね。だけど寒いね】

だから、どこに居るんだよ。

【場所、移動して欲しいの】

…どこにだ。

【部屋取ってあるの】

…なんだと?部屋って…、どういうつもりだ…。

【驚いた?こんな日だから予約で一杯で、レストランは無理だったの。
だから××ホテルのフロントで私の名前を告げて。
先に行って部屋で待ってるから】

は……なんて事だ。さっぱり解らん。俺だぞ?京。
相手、本当に間違ってないのか?
こんな日に、…部屋なんて。………んー。

【そこからも花火は見えるのか?】

【うん。見える部屋だから予約した】

【すぐ行く】

よし、…もう、行くぞ。行ってやる。
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