〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。
おまけ

・課長の憂鬱Ⅰ


「陽人に会って来ます。行ってきます」

そう言って、今夜、俺の腕の中から京は出て行った。
課長命令だと言わなければ、行けないだろうと思った。
何かきっかけを作らなければ、京は吉澤さんのところへは行けない。

少し怖がらせてしまっただろうか。
それに、俺は少し卑怯な言い回しをした。

ちゃんと終わらせて来いと。

ただ話して来いでは無い。
終わらせる事を前提に、会って来いと言ったんだ。

会ってどんなに心が揺れたとしても、帰って来るように言葉を植え付けたんだ。
待っている俺の心の僅かな支えは、京が、行ってきます、と言った事だけだった。

行ってきます、と言った事は、帰って来る意思があるから出た言葉だと信じたい。
だが、例えそうだったとしても、気持ちは出掛ける寸前のモノ。
その後で変わらないとは言い切れない。

どこに行くかと思えば、花火を見に行くって言う。
言葉、足りなくないか?
言い方、おかしくないか?

それでは俺公認のデートじゃないか。
しかも、12月△日なんて、クリスマスも近付いていて、街はいいムードじゃないか。
はぁ。心配でも尾行するなんて情けない事は出来ないし。
焼けぼっくいに火がつく事だってある。...あっては困るけど。
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