〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。

【今から帰ります。京】

はぁ、京...。
ほっとした。取り敢えずは、帰って来るんだな。

どんな話になったかは、帰ってみないとまだ解らない。

道、混んでるかもな。
俺が車で待ってたら良かったな。
いや、それは今回は駄目なんだよな。

帰り着くまでのだいたいの時間が解るのも落ち着かない。
ドカッと腰掛けて、なんでも無い顔をして待っていないと。

情けないんだからな俺は。
そうだ。返信まだだった。

【気をつけて帰って来いよ】

よしよし、これで普通だろ。いつもの俺だ。
...違うな。

【気をつけて帰って来るんだよ】

こうだな。こっちがいい。よし。

ふぅ。そうだ、寒かったんだから風呂入れておくか。
温まりたいかも知れない。そうしよう。


ピンポン。帰って来た。
走るな、俺。

「お帰り、京」

「遅くなりました。
帰って来ました、課長のところに」

「京...俺の思っている事は合っているだろうか。俺のところって、...つまり」

「はい。澤村京になりたくて帰って来ました。
寒いです、課長。
温めてください」

「だと思ってお風呂入れてあるぞ?」

京が首を振る。

「ううん。...嫌です。
課長が温めてください」

「京...」

こんな事を京が言うなんて...。

「ギューッて思いっきり抱きしめてください」

少なからず、何かはあったという事だな...。

「...解った」

玄関先で抱き合った。
京が壊れてしまいそうなくらい力一杯抱きしめた。

...陽人を消してください。課長で一杯にしてください。

「旅は...旅と知って、今日の旅は数時間の弾丸ツアーだったんです」

「ああ。...無事に、帰って来た。...良かった」

これからは、ずっと長期滞在だよな、京。ずっとだ。
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