〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。

この抱擁には安心感がある。
気恥ずかしい程の初々しさもある。
胸が半端なく高鳴った。

なんで別れてしまったんだろう。
どうして別れる事を肯定してしまったんだろう。
離れても、上手く付き合えていた気がする。
今があるから言える事なのかも知れない。
そうでも無い気がする。

俺達は最初から二人の付き合いを最優先していた訳じゃ無かった。
限られた環境で付き合っていたんだ。
二人だけのベタベタした世界を過ごして来た訳じゃなかった。
だから、深く繋がれたのかも知れない。

今はなんの縛りも無い。
思いも溢れ放題だ。
止まらない。好きが止まらない。

28歳の俺。
止まっていた高校生の衝動が始まった。
感情も身体も思いのままぶつけたくなった。

「…京、どうしよう。
優しくしたいけど、もっと欲しくなった。いいか?大丈夫か?」

素直な衝動だ。

「陽人…。大丈夫だと思う」

京の言葉、聞こえたような聞こえなかったような気がする。もう京に夢中だった。

抱いていた。好きだという衝動のまま、京を抱き続けた。
今日が最後って訳でも無いだろうに…。

爆発した気持ちが止まらない。嬉しかったんだ。
他の誰でも無い。
京の初めてが俺だったこと。
自分で自分の気持ちを確認していた。
こんなにも好きで堪らないなんて。

今の俺はガキの俺だ。
あの頃よりもっと京に夢中だ。
俺の中のずっとしまい込まれた不完全だったモノ。
やっと終わらせられたような気がした。

好きだと解った途端これだ。
京、申し訳ない。
男の衝動だ。
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