〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。

「碧井?どうした、具合でも悪いのか?
碧井?」

はっ、いけない。意識をとばしていた。
頭を抱え込んでいたから、誤解されたんだ。

「あ、いえ大丈夫…」

「医務室行くぞ」

「え、いや、大丈…」

手を引かれた。

「私が連れて行きます」

麻美が立ち上がった。
その言葉を課長は制止した。

「いや、いい。高遠は仕事続けて」

「…はい」

いや、誤解なんですけど…どうしよう。
こうなったら気分でも悪い事にした方が無難に解決するのかな。



とうとう医務室まで来てしまった。

「失礼します。
…誰も居ないな。取り敢えず、座れ」

「はい。あの…」

ベッドに腰掛けた。

課長はパイプ椅子を広げて目の前に腰掛けた。
え、あの、一体これは…。
どういうシチュエーションなんでしょうか。


課長は眼鏡を外して上着の内ポケットにしまった。

「あの、課長、私…」

「碧井。解ってる。
具合、悪くなんか無いだろ?」

「はい。…あ」

考え事して頭を抱え込んでいたのは解ってた?って事か。だったら、何故?…。

「うん。
こうでもしないと中々お前と二人きりになんてなれないからな」

「…は、い?」

「ん…俺は情けない男でさ…」

「はい。あ、いや、違います。違います。今のは普通にした返事です」

クスッと笑って両手で髪をかき上げ、頭の後ろで手を組んだ。

「気が付いてくれたらいいのにって、何も言わず、ずっと見続けて来た」

「は、い…?」

何の話しだろう。
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