〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。
「お願い。私の話を聞いて欲しいの」
ソファーの後ろから、腕を回し陽人に軽く抱き着く形になった。
…こんな態度で話すのは良くない。
女を使っているみたいに取られるかも知れない。
顔を合わせて、正面からは言い辛い。少し、逃げたい気持ちがあるのかも。
それでも今、話さなきゃいけない。
臆病な私は卑怯だと知りつつ陽人に腕を回したんだ。
「陽人の気持ちは知らない。でも、私の気持ちを聞いて知って?」
陽人…黙ったままだ。
ふぅ。
「…高校卒業した時、終わりだねって言った。
そう言わないといけないと思ったから。
あの時の私は陽人の事、好きで好きでどうしようもなくなってた。
でも頑張ってなんでもないように言った」
陽人…少しピクッとした?
「終わらせる事が約束のように思えたから。だから言った。約束通りに」
少し鼓動が早くなった?
「大学だって、違う学部で同じ大学に行こうかと思った。頑張れば陽人と同じ大学になんとか行けたと思う」
…。
「…でも、そんな事、しちゃ駄目だって思ったから。
それは陽人にくっついて行くようなものだもの。
陽人だって望んで無い。そう自分で思って判断したの。
大学は別に。本来、進むべき道を進む。
自分の道は自分で決めるものだからって言ったし、そういうモノだし、…話せなかった。
卒業したら終わるんだ。
困らせて嫌われて終わりになりたくないって思った」
…。
「ごめんね陽人。昔の事を今頃話すのは卑怯よね?
何を言っても過去は変えられない。
今言っては、言ってる事が本当かどうかも解らない。
帳尻合わせの話をしているのかも知れない。そう思われても仕方ない。
今更何を言ってもどうにもならないもの」