〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。
オフィスのフロアに帰って来た。
麻美は仕事を始めていた。
「あ、碧井さん」
入り口で声を掛けられた。田口君だ。
「あの…今朝はご迷惑をお掛けしました。
課長に聞いて。碧井さんが処理してくれたって。
すみませんでした。有難うございました」
良かった。田口君が出来る子で。
誰にも声が聞こえないようフロアの隅で話をしてくれた。
自分のためかも知れないが私にとっても都合が良かった。
麻美に、課長から仕事を頼まれてしていたとは気付かれずに済んだ。…多分。
知ってしまえばコーヒーの意味も嘘だとなる。
嘘だとなると、なぜそんな事を言ったかになる。
…色々詮索されたく無い。
変に拗れて面倒臭くなるだけ。
「たまたま早く来てたから。それに、仕事よ、仕事」
「あ、でも、ご迷惑を掛けました。有難うございました」
「あぁ、では。どう致しまして、で、いい?」
「はい!有難うございました」
もう、言葉の応酬はいいだろう。キリがないもの。
「はい、午後の仕事、仕事よ。田口君もね」
頭を軽く下げて田口君はフロアを後にした。
あ、もしかして私の事、帰って来るのをわざわざ待っててくれたのね。
営業は忙しそうね…。
ミスは困るだろうけど、頑張ってるって良く解るなぁ。
仕事に充実している人は解る。
私も男だったら良かったかな。…女は面倒臭い。
…男だってツライ、か。