〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。
「私に…貸してください。課長の、胸を…貸してください」
キャッ。
「…もっと早く来い。…昨日だってずっと一緒に居ただろ…。
俺は核心には触れないようにしていた。だから、泣けなかったのかも知れない。
矛盾しているな、俺も。
だけど、辛いなら泣け…。
泣きたいという事は吐き出したいモノがあるからだ。…泣け。…気が済むまで泣けばいい…」
しゃくり上げるように京は泣き始めた。ただ泣き続けた。
涙がこんこんと湧き出て来て俺の胸を濡らす。
ただ抱き止めていた。
この終わり、どうやって終わらせたらいい…。こんなに…彼の事が好きなのに。
京に委ねてみるか。
泣き止んだら京はどうするだろう。
淡々と帰って行くのだろうか。
…俺はどうする。
衝動に任せていいのか。葛藤するのはなぜだ。
自分の好きな人が自分の胸で泣いている。…自分から来たんだ。
…なんの葛藤だ。
吉澤さんの深い思いにだ。
それと、まだ解らない京の気持ちだ。
だから、衝動すら起こせない。
…ほぼ安全だと思う道を、完璧に確認しないと走れないのか、俺は。
随分と大人の振りをしてるじゃないか。
正直でいいんじゃないか…。
京を抱き上げた。