〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。
「碧井〜。居るか?」
「は〜い。何でしょう?」
声の主に近付く。
「ちょっとだけ残業頼めるか?」
「はい。大丈夫です」
「これなんだけど。週明けの出張で使う。くれぐれもミスの無いよう、頼む」
「はい」
作り直さずに済むよう、一発でって事よね。
来週の出張、私も同行する。
事務職だった私は今は総合職になり、こうして出張にもついて行くようになった。
入社して経歴の長くなった私は、変な言い方だが、本気で仕事をして見ないかと上司に今後を打診された。
女性は結婚が仕事を左右する事が多い。
正直、この先結婚はしないものだと判断されたのかも知れない。
別に悪い気はしなかった。
仕事をしている人間なら、昇進を気にしたり、その他色々とあるものだ。
男性なら、当たり前にある事。女だから。結婚する。出産する。寿退社を選ぶ場合もある。
出産後、復職する事はまだ中々難しい。
長く居る女性は、お局様と言われ…。
会社は女性に取ってまだまだ辛い場面が多過ぎる。
「澤村さん、出来ました。確認お願いします」
「うん。よし、OKだ。ファイルしといてくれ。忘れず携行するように」
「解りました」
「あ、っと、京…」
周りに解らないように手招きされた。
「は、い?」
少し近寄る。
「もう出られるだろ?飯食って帰ろう」
書類の陰で囁かれた。
「はい」
「先に出る。駐車場で待ってるから」
「はい」