〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。
澤村さんの知り合いだというお店に着いた。
「大丈夫ですか?私一緒で」
「大丈夫だ。仕事とは関係無い知り合いだ。そうで無くても気にする必要は無い。行くぞ?
お任せでいいよな?」
「はい」
お店に入った課長は大将とアイコンタクトする。全てはそれで成立するらしい。
奥の部屋に入ったのを確認すると、料理は澱みなく運ばれて来た。
何だか凄い。
家庭の奥さんでも、こんな阿吽の呼吸のようにできるものかしら。
目にも鮮やかな美味しそうな料理が次々と並んだ。
「これ、…飲みたくなりませんか?」
「ああ、そうだな。でも仕方ない。車だ」
「アルコールフリーにされたらどうです?雰囲気だけでも」
「いや、そうまでして飲まなくていい。さあ、冷めない内に食べよう」
「はい。
美味し〜い、凄く美味しいです、これ」
「そうだな。京、これ好きだろ?俺のもいいぞ、食べて」
「有難うございます。では遠慮無く、頂きます」
「うん」
月日が流れるのは案外早いものだ。
慣れない事に忙殺されていた事もある。年齢のせいもある?
綺麗な言い方をすれば仕事に生きてきた。
いつしか、こうして課長と自然にご飯を食べるようになった。
「今日、…今夜、泊まるだろ?」
「…はい」
部屋に泊まる事もある。
「この前、京が作ったの何だっけ」
「この前…海老しんじょ?の事ですか?」
丸く輪を作って見せながら尋ねた。
「それだ、それ。あれ旨かったよな」
「…有難うございます」
部屋に行けばご飯も作る。
このお店の料理も今後の参考にさせて頂こう。
全て自然な流れ。
肝心な言葉…。
付き合おうとはどちらからも言っていない。なぜか触れない。
それでも、こうして一緒に居る。
言葉を避けている訳では無い。口にしないだけ。
あくまで自然に任せた結果だ。