〇年後、微笑っていられるなら〇〇と。

「課長」

「京、もう本日の業務は終了してるよ?」

「…拓さん」

「なんだ?拓でいいぞ?」

「いえいえ、恐れ多い」

「なんで…」

「だって課長だから。年上ですし」

「だから、課長は仕事上の事じゃないか。年上とかは問題じゃない。俺は澤村拓だ」

「…そうですけど」

「まあいいさ。家では絶対拓だからな」

子供みたいな事言わなくても…。
呼ばない本当の理由は、私が会社でうっかり呼んでは大変だからなんだけど。

「食べ切れなかったら持って帰るか?」

「はい。せっかくのお料理、勿体ないですから。こんなに沢山出して頂いて」

「じゃあ、頼んで来るよ。もう少し食べてから下げて入れてもらおう」

「はい」

課長は席を立つと襖を開け出て行った。

大将と話もあるだろう。
きっとお土産の和菓子も頼んでくれるつもりだろう。

課長は優しい。
私の好きな物は殆ど覚えてくれている。仕事とはまた違った気配りだ。

「失礼します。お茶をお持ちしました。
お下げして宜しいですか?あちらで詰めて参りますのでゆっくりされててください」

「有難うございます。お願いします。
とても美味しかったです」

お茶と苺大福が置かれた。

「有難うございます。主人が喜びます。是非またいらしてくださいね。
フフフ。張り切って作り過ぎたようですね」


お茶を頂く。
はぁ、ほっとする。

課長が戻って来た。
手には大小二つの手提げ袋。

「帰ろうか?京。会計も済ませたから、こっちから出よう」

「はい。課長、お茶は?いいですか?」

「ああ、あっちでもらったから。帰ろう、京。…早く帰りたい」
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