ヒモ系男子にご注意!!
屋上への階段を登る。
──あんな話聞いて今までどおりに行かないからな。
話によると、井澄は有名なヒモ気質のタラシ男らしい。
何か聞いたことある名前だなぁと思っていたら、やっぱり有名人だった。
井澄は付属中学出身で、その頃からヒモ気質だったらしい。
性別年齢を問わず貢がせる。
しかし、本人たちは貢ぐことに苦は無く、中には貢いだことに気がついていない人もいるらしい。
それは井澄の長けたコミュニケーション能力と見た目が原因だろう。
いつ頃からか井澄に反発する集団も出来たと言う。
しかし引っかかる生徒は後を耐えない。
「じゃあ、真希ちゃんも」
「あのクズ男に引っかかった一人よ」
お昼を食べ終えて教室に戻った私達は、真希ちゃんを抜いた3人で話していた。
「それ、本人は知ってるんだよね?」
美月ちゃんと千世子ちゃんはため息混じりに頷いた。
「それを知ってるから質悪いのよ」
「というと?」
「クズ男で有名なのに自分には優しいから好きになっちゃったのよ」
「あぁなるほど」
納得ですよ。
「依里ちゃんも気おつけてね。貢がされないように!」
「いやいや、私は貢いだりとか引っかからないよ!ただ脅されて困ってて…」
「──それ、井澄の策にはまってるよ」
「え?」
屋上のドアは壊れているので強く押すと開くらしい。
回し蹴りで豪快に開いた。
雲ひとつ無い青空。
春の空気は美味しい。
簡素なコンクリートの屋上で寝転がる人影が1つ。
近づき上から覗き込むと、目が合った。
「奢った分の金返せ、ヒモ男」