万華鏡
そのまま、歩いて行こうとする真野杏珠。
だが、一瞬ふらりとした様子で俺は咄嗟に手を差し出してした。
「はぁ、はぁ、」
荒い息で浅く呼吸している。
「おいっ!しっかりしろ!!」
俺の声も届いてないのか、虚ろな目で遠くを見ている。
「チッ、」
真野杏珠を担いで車へと足を運ぶ。
「若っ!!」
組員が焦った声を出すも今は、そんなことに構ってられない。
「俺のマンションまで」
それを聞いて走り出した車。
車内では真野杏珠の荒い息だけが響く。
「下ろせ」
運転席と後部座席の間に黒い仕切りが下ろされた。