『美味しい』は『可愛い』より正義な件について
あれは確か小学校3年生の時、クラスの男子に父親がいない事でいじめられたことがあった。

“父親がいないせいでいじめられている”事を母親に相談することも出来ず、毎日帰宅しては家の片隅で膝を抱えて泣く日々が続いた。

当時健吾とは違うクラスで、学校の行き帰りは一緒だったものの同じように母親がいない健吾にもやっぱりいじめられている事実は言えなかった。

しかしある日廊下で、「父親がいない癖に」と大きな声で罵られている場面を健吾に目撃されてしまったのだ。

私は恥ずかしさと悔しさで、その日は一人で泣きながら帰った。

しかしその次の日からいじめはピタリと止むことになる。

私は嬉しくなって健吾に報告に行ったのだ。

インターホンを鳴らして出てきた健吾を見て驚いた。

頬をわずかに腫らして、膝や腕には絆創膏が貼ってあった。

私はピンときた。

健吾があいつらをやっつけてくれたんだ。

なぜならその男子達も顔中傷だらけだったから。
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