『美味しい』は『可愛い』より正義な件について
いじめられなくなった事を伝えると、健吾は「良かったな」の一言だけ言ってすぐドアを閉めてしまった。

次の日もその次の日も、決して自分がやった事を言おうとはしなかった。

(わかりづらいけど…優しいんだよね)

昔の事を思い出してわずかに頬が緩む。

その時ピンポーンと音がして健吾がリビングに入ってきた。

「おかえりなさい。」

「おぅ、……何ニヤニヤしてるんだ?」

健吾が怪訝そうな顔でこちらを見てくる。

「べっつに~」

私は笑みをはりつけたまま、冷蔵庫から先程漬けたお肉を取り出した。

フライパンを熱して、お肉を炒めていく。

ジュウッという音がして、あたりに香ばしい匂いが立ち込める。
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