『美味しい』は『可愛い』より正義な件について
黙々と作業していると、どうしても隣の健吾を意識してしまう。

骨ばった綺麗な手が、コロッケに小麦粉をつけては卵の中に落としていく。

時折ぶつかる肩も、昔は大差ない位置にあったのに、今では20センチは差があるんじゃないだろうか。

(…いつの間にかすっかり“男の人”になってる。)

思えばこんな風に肩を並べて料理することも今までなかった。

(あの美人さんは、健吾のこんな姿見れないよね。)

落ち込んでいた心が少しだけ浮上した気がした。

健吾を意識して赤くなった顔を隠すように下を向いて作業に没頭していたら、最後の一つに衣をつけ終えた。

後は油で揚げていくだけだ。
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