『美味しい』は『可愛い』より正義な件について

健吾が夢中になって食べている姿を見ていると、何だか心がじ～んとしてきた。

（あ～今私、幸せだなあ。）

顔のニマニマが抑えられない。

「ねえ健吾、手伝ってくれてありがとうね。こんなに美味しくできたの、健吾のおかげ。」

「何だよ、大袈裟。衣つけることしかしてねえし。」

「それでも！…今日のコロッケは、…健吾のおかげ。」

告白のシーンを見て落ち込んでいた心が、今はこんなにあたたかい。

引き続きじ～んとしていると、健吾が箸をかたりと置いた。

「……なあ、俺さ…他のどんな食事よりも、さよりの作る食事が一番美味い。」

こちらをじっと見て、真剣な表情でそんなことを告げてくる。

「……ありがとう。なんか健吾にそんな事言われると……そわそわしちゃうね。」

「そわそわ？」

「うん、そわそわ。なんか落ち着かない。」

そう言うと途端に呆れた顔をして、また箸をとって今度はがつがつと食べ始めた。



（…？私、変な事言ったかな？）

（そこは“そわそわ”じゃなくて“どきどき”だろ、ばーか。）