『美味しい』は『可愛い』より正義な件について

健吾がカレーをじっと見つめている。

「どうしたの？食べないの？」

「……いや、食う。」

スプーンを掴んで一口。

「美味い。…このルー、こないだ買ったやつ？ウチで作るのと味が違う…。」

私はふふんと得意顔だ。

「カレーにはね、色んな調味料を入れた方が美味しいの。」

何を入れたかはあえて言わず、私もパクんと一口ほうばる。

うん、美味しい。ルーに豚肉の甘みと野菜の旨味、それに加えた調味料たちがうまく混ざり合って一つの味に凝縮されている。

「豚肉、やわらかいな。これ、どうやるんだ？」

「最初に表面だけ焼いて、あとはじっくり煮るだけよ。」

あとは二人とも無言で食べ続けた。

（豚肉も案外美味しいじゃない。）

いつもママと食べるのは鶏肉のカレーだが、一緒に食べる人が違うと材料も味も違ってくる。

それは、新たな発見もあって、少しワクワクする。