『美味しい』は『可愛い』より正義な件について
「ほら、ここはこの公式を使うんだよ。」

健吾はそう言うと、一連の計算式をスラスラとノートに書きこんでいく。

「あ、本当だ。これなら私でもわかる!」

私はそのノートを見て、感嘆の声を上げた。

そのノートはよく見ると、前のページにびっちりと書き込みがしてあるのが透けて見えている。

“ここがポイント”や“目に見える方が分かりやすい”など、今日健吾が先生から教わったであろう言葉がびっしりだ。

「……ごめんね、健吾。……でも、ありがとう。」

私が鶏肉か豚肉かで悶々としている間に、健吾は私の事を考えて動いてくれていた。

そう思うと、心の奥の方が温かくなってキュウッとする。

「さより」

「なに」

「……“ありがとう”以外に、……何か俺に言う事ない?」

“ありがとう”以外の……健吾への気持ち……

「健吾、私……また、頑張って健吾好みの美味しいご飯作るね!」

私はありったけの気持ちを込めて健吾に告げる。

健吾は一瞬目を見開いたかと思ったら、ガックリと肩を落として無言で課題を見つめている。

「……続き、やるぞ。」

「はい!先生。」



(“数学頑張る”の方が良かったかな?)

(馬鹿な子ほど可愛い)
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