神木の下で会いましょう
「送った」


携帯を見ると新着メールが二件。

一つは春からので、さっきの写真が添付されていた。

それを大切な写真フォルダに保存する。


「ありがとう」

「どういたしまして。そろそろ戻るか」

「うん。昴が早く戻って来いだって」


もう一件のメールは昴から。

メールの下の方に“恋が叶いました”なんて乙女チックな言葉が書かれていて二人で小さく笑った。

それからお茶と春のお母さん手作りの桜餅を持って昴達の元へ戻ると、甘々な雰囲気のカップルが一組。

お互いに平然を装っているけれど、顔に出ているめぐちゃんと、「遅い」なんて言葉に出ている昴を見て、春と顔を合わせてクスッと笑った。

桜の木の下で告白すると想いが叶うという伝説は本当らしい。

帰り際、春と二人で昴とめぐちゃんを見送って姿が遠くなるまで見つめた。

並んで歩く姿は友達なんて軽いものじゃなくて、男女の仲が垣間見えるもの。

遠慮がちに繋がれた手が初々しさを表現している。

恋がどういうものか理論的には理解出来ていても、心が理解出来ていないから曖昧な感情で、昴とめぐちゃんを見ていて自分にも早く大切な人が出来ればいいなと思う。

失うことの悲しみよりも、得られることの大きさを感じて人との関係をもっと紡いでいきたい。


「来年も桜見ようね」


春と一緒に、昴とめぐちゃんと一緒にまたお花見したいな。

隣を見上げるとダークブラウンの髪を靡かせて優しい表情で笑い返してくれた。

いつの日か桜の木の下で恋した人に告白したい。

縁結びの神様の元で。

“春”という季節が私にとって明るい季節となるように。
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