あなたの背中に恋してる~奥手な男子の攻略法~
絵梨はまだ、信じられないって声に出して騒いでる。
「いくら、前もって宣言してたって、
その通り別れようって、どんだけバカにされてるのよ」
「ん…」
私も神妙な顔して、絵梨に合わせる。
馬鹿にされてるとまでは、思わなかったけど。さすがに。
私が、気が滅入ると思ったのは、
彼にもう付き合えないって言われたことより、
彼が、別れるタイミングを、探してたんじゃないかなって感じること。
賢い人だから、決して別れたいなんて素振り、これっぽっちも見せないけど。
そろそろ潮時だろうなって思ってたんだろうな。
彼は、何の抵抗もなく、あっさりと判断を下したんだ。
辞令を聞いた瞬間に持って行く物と、置いていくものみたいに。
早坂さんの気持ちに、少しの後ろめたさもない。
遠くに離れてしまったのに、面倒なことまでして付き合うつもりはない。それは、はっきりしてる。
私まだ、あなたと別れたくないって泣いて駄々をこねても、彼は、ほんの少し同情した顔で、
「ごめんね。でも、俺、最初から言ってあったよね。条件つきだって」
って言うに決まってる。
付き合いが長いからよくわかる。
私がそれ聞いたときの反応も、
やっぱそうか、だもの。
痛いのは、物みたいに扱われてそれに気づいてたのに、、
ずるずる付き合いを長引かせたことだ。
「本当に最低だね…」
そうだ。最低なのは、
付き合うには向かない男ってわかってて、
関係を切ることが出来ずに、ずるずると続けて来たことだ。
人生、何年無駄にしたんだろう。