あなたの背中に恋してる~奥手な男子の攻略法~
「ドアは大丈夫みたいだね。
でも、鍵は交換しなきゃ」
志賀くんが、壊されたドアの鍵を確認しながら、大家さんの説明を私の代わりに聞いてくれてる。
一晩たって、落ち着いたと思っても、そんなに、簡単に割り切れるものではなかった。
昨日、そのままになってる、切り刻まれた洋服やシーツを見たら、
私は、気分が悪くなってその場にうずくまってしまった。
志賀くんに言われて、部屋のすみに座って、ごみ袋を手に
壊れたものを、資源ゴミと燃えるゴミに分別する。
私は、彼に言われたとおり、ごみ袋に入れていく。
袋はすぐに一杯になっていく。
大家さんが、横に来て慰めてくれる。
「酷いことするな。本当に。
友芽ちゃん、頼りになる彼がいてよかったね。
鍵屋さん、午後に来るから、
一応、鍵が付けば住んでも大丈夫だけど」
「はい…」
私は、下を向いた。
そうだ。片付けたら、志賀くんに甘えるのは止めなきゃ。
カーペットも変えて、鍵も頑丈のにして、部屋の中身をすべて替えたら、ここにもう一度住む気になれるかな。
近くにいた志賀くんが上から声をかけた。
「その様子じゃ、ここに住むのは無理だろう。もう少し、家にいればいい」
志賀くんは、いつのまにか私の前に屈みこんで、私の不安そうな顔を見つめていた。
「何だ…見てたんだ…」
大丈夫だから、そう言って強がって見せる元気も、私には残って無かった。
顔を上げて志賀君の顔を見る。
相変わらず、無表情で言われても。
どう受け止めればいいのか分からない…
「よかった。その方がいい。
警察も言ってたけど、お金目的じゃないみたいだから…
何かあったらまずいよ。
もう少し彼の所にいた方がいいよ」
大家さんが、ここに来るのはまだ早いと背中を押してくれた。
「何してるの…早く必要なもの、
車に積んで…」
志賀くんは、大きめの袋の口を広げて、
ここに入れろと言っている。