あなたの背中に恋してる~奥手な男子の攻略法~
一度、早坂さんが、ストーカーまがいの男を捕まえてくれたけど、
相手は全然面識のない、偶然通りかかった見ず知らずの男だった。
『お前が、色気振り撒くからだろ。
そんなエロい体してるやつが悪い…』
早坂さんに言われて悲しかった。
そんなつもりないのに。色気を振り撒くなんて全然してないのに。
自分で意識していないことで、誰かに影響を与えるのは、恐ろしいことでもあった。
学生の頃は、ぼんやり壁を見つめていたはずが、俺のこと見てただろって、いきなりクラスメイトから腕をつかまれたり。
恐ろしいことに、誰がこんなことしてるのか分からない。
いつ、どこで、目をつけられたのか
本当に、心当たりも、見当も付かないことにますます気が滅入る。
「気にするな」
志賀くんの言葉がすっと心に入り込んでくる。短い言葉だけど。本当に心にしみてくる言葉。
「うん…ありがとう。
でも…志賀くん、彼女とか…好きな女の子とかいないの?」
もしそういう子がいたら、私が家にいるとその子に誤解される、志賀くんの厚意は受けられない。
彼は、私の方をちらっと見た。
「そんなこと、気にするな…」
「志賀くんの両親は?
帰って来ていきなり女の子がいたら?びっくりするよ」
「驚くだろうけど、でも、喜ぶんじゃないかな?」
「どうして?」
「そういうの、親に全然、話しないから。ひそかに心配してる」
微かに笑った。志賀君そんなふうに笑うんだ、
「そうなんだ…」