あなたの背中に恋してる~奥手な男子の攻略法~
私は、彼の部屋で彼が先のことを考えながら、自分の予定と都合をあわせているのを上の空で聞いていた。
「友芽、あのアパートは今月中に引き払え。それで、選択肢は二つ。この部屋に住むか、俺と大阪に来るか」
「どっちも嫌」
「じゃあ、どうするんだ」
「新しい部屋探す」
「怖くて無理だろ?一人暮らしなんかできるか」
「ば、場所変えれば、何とか」
「会社も知られてるだろ?後を付けられたら終わりだ」
会社の場所を知られてるだけじゃない。志賀くんのことも知られてる。
「大丈夫だから、放っておいて。早坂さんもうすぐ大阪行かなきゃ行かないじゃない」
「ああ。だから、お前も来い」
「仕事は?友達は?みんな捨てるの?」
「何かあってからじゃ、遅いだろ?」
「そんなのやだ」
たとえ、一緒に住めなくても、会社で見られるかもしれないもの。
そのくらいなら…
「なあ、友芽は、ちゃんと好きな人を作って、その人と暮らしたいって希望があったろ?
俺みたいに人を信頼できない人間じゃなく。
でも…お前今幸せか?いくら好きだからって、いまいちよくわからないやつなんか、信用できないだろ?
そんな恋愛してて幸せか?そんなやつより、お前、俺といたほうが安心して暮らせるだろう?」
「早坂さん、ごめんなさい。私、志賀くんにはっきりダメだって言われるまで判断できない」
「聞くまでもないだろ?
だいたい…半月も近くに居て、何にもないっておかしいだろう」