パドックで会いましょう
僕はねえさんの手を引き寄せて、ギュッと抱きしめた。

「ずっと会いたかったんです。何週もずっとパドックでねえさんを待ってました。正直、もう会えないかと思ってました。」

「うん…。アンチャンが会えて良かったって泣きながら言うてくれて、嬉しかった。」

「ものすごく恥ずかしいから、泣いてた事は忘れて下さい…。」

ねえさんは僕の胸に顔をうずめて、小さく笑った。

「僕はね…ねえさんが今だけって言った時…僕がねえさんに本気にならないように、今だけって言ったんだって…ねえさんは僕の事、好きでもなんでもないんだって思って、すごくショックだったんです。」

「…そうなん?」

ねえさんはキョトンとしている。

なんだか勘違いしているみたいだし、この際だから僕の気持ちをハッキリ伝えた方がいい。

「そうですよ。僕はずっと本気ですから。ねえさん、僕は…初めて会った時から、ずっとねえさんが好きです。」

「…えっ、そうやったん?!」

ねえさんって、もしかしてものすごく鈍い人なんだろうか?

本気で驚いてるみたいだ。

「僕はねえさんとお互いを名前で呼び合って、次に会う約束をして、一緒に誕生日をお祝いして、日曜日の競馬場以外でも会える関係になりたいです。」

「うん…それなんやけど…。」

「…ダメですか?」

もしかして、恋人として付き合うのは無理だと言われるのか?

ありったけの勇気を振り絞って、人生で初めて告白したのに…。



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