パドックで会いましょう
「あのさ…アタシを、アンチャンとおんなじ苗字にしてくれる?」

「……はい?」

「そんで、一緒に住むってどうやろう?」


えーと…ねえさんが僕と同じ苗字になって、一緒に暮らすと言う事は…。


ねえさんは僕の手を取って、そっと自分のお腹に導いた。

「ちなみにな…一緒に暮らす予定の子が、ここにおるんやけど…。」

「………ええっ?!」

「あん時の子が、ここに居てるねん。」


えっ?ええっ?!

いろいろ飛び越えて、いきなり結婚?!

初彼女ならぬ…お嫁さん?

ねえさんのお腹に…僕の…子供?!

ねえさんが奥さんで、お母さんで、僕がお父さんになるのか?


あまりの急展開に、僕の頭の中はグルグルと大暴走。

目を見開き口をポカンと開けて放心状態だ。

「……やっぱり、無理…やんな。急にこんな事言うたって…。お腹の子が自分の子っていう証拠もないしって、思てんのやろ?」

ねえさんは少し悲しそうに、放心状態の僕の手を、ゆっくりと離した。

「ごめん。今の全部忘れて。もう会わへんし、アンチャンには迷惑かけへん。やっぱりこの子はアタシ一人で産んで育てるから。」

ねえさんは僕に背を向けて歩き出した。

僕は我に返り、慌ててねえさんを追いかける。




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