パドックで会いましょう
「待って、ねえさん!」

「アンチャンまだ若いもん、いきなりそんなん考えられへんよな。アタシの方が多分かなり歳上やし、すぐオバチャンになる嫁なんかイヤやろ?」

「いやいやいや、そんな事言ってませんから!!とりあえずちょっと待って!!」

いくら待ってと言っても歩くのをやめないねえさんの手を引き寄せて、思いきり抱きしめた。

「僕はねえさんが好きだって言ったでしょう?ねえさんは、僕の事、好きなんですか?」

「うん…好き…。」

初めてねえさんの気持ちを聞けた。

ちょっと恥ずかしそうだ。

「僕と同じ苗字になって、子供産んで、ずっと一緒に暮らすんですよ?僕の事がイヤになったからやめるなんて、言わせませんからね?」

「絶対言わへん。」

ねえさん、なんだか子供みたい。

かなりかわいい。

「じゃあ…ちゃんとプロポーズしたいんだけど…その前に、まずは名前から教えて下さい。」

僕の腕の中で、ねえさんは顔を上げて、八重歯を覗かせてニコッと笑った。

久しぶりに見た、この笑顔。

ねえさんのこの笑顔、やっぱり好きだ。

「とりあえず立ち話もなんやから…アンチャンち、連れてってくれる?」

「いいですよ。あ、その前に…。」

「ん?」

少し首をかしげたねえさんの唇に、優しく唇を重ねた。

「大事な事だから、もう一度言いますよ。僕はねえさんが大好きです。」

「アタシも好き!」

ねえさんは嬉しそうに僕にしがみついた。




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