パドックで会いましょう
ねえさんの色香にやられてポワンとしている僕の耳をつんざくように、ファンファーレが鳴り響いた。

たくさんの観客たちが、ファンファーレに合わせ丸めた新聞で手を叩いて、リズムを取っている。

ファンファーレが終わると、ものすごい大歓声が上がった。

「知ってるか?地方によってレースのファンファーレは違うんやで。関西はアップテンポやけど、関東はクラシカルやねん。もちろん中京競馬場も全然雰囲気の違うファンファーレがあるし、レースのグレードによってもファンファーレが違うねん。」

「へぇ…面白いですね。」

「てもやっぱり、関西のG1ファンファーレが一番興奮するな!!お祭り始まるでー!!って感じがするやろ?」

「確かに。なんだかワクワクします。」

「馬は臆病でデリケートな生き物やから、こんな大きい音出して怖がらせるべきじゃないんやけどな。」

「そうなんですか?」

「それでもこんくらいの事でビビッとったら、大きいレースでは勝てん。これに動じんくらいじゃないと、大物にはなれんのよ。」

「なるほど。」

ねえさんはまた競馬を熱く語る。

知らないおじさんにこんなに熱く語られたら、おそらくドン引きしちゃうんだろうけど、それがねえさんだと、全然退屈じゃない。

やっぱり美人だからか?

それともねえさんには、人を惹き付ける魅力みたいな物があるのかな。


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