パドックで会いましょう
次の週の日曜日も、ねえさんは来なかった。

どうしたんだろう?

もしかしたら、もう会えないのかもと思ったりする。


その日も僕は、帰りにおじさんといつもの居酒屋でビールを飲んだ。

おじさんは今日も顔色が良くない。

やっぱり体調が悪いんだろうか。

おじさんは枝豆を口に放り込みながら、僕の浮かない顔を見て笑った。

「今日もおねーちゃんに会えんで残念やったのう、アンチャン。」

「二週も続けて来ないなんて、どうしたんでしょうね。昨日は来てたんですか?」

「いや、来てへんよ。別に約束してるわけちゃうし、まあ、そんな時もあるわ。」

ねえさんが姿を見せない事、おじさんは気にならないのかな?

そもそも僕は、ねえさんが結婚しているかどうか、独身でも恋人はいるのか、何も知らない。

勝手にねえさんの事を独り身だと思っていたけど、もしねえさんに夫や恋人がいたら、完全に僕の不戦敗だ。


先週、ほんの少しおじさんの過去に触れたせいなのか、それともおじさんの調子が良くなさそうだからか、僕はおじさんが普段どんな生活を送っているのかも気になり始めた。

「おじさんは独り身なんですか?」

「そうやけど…それがどないかしたんか?」

「ひとりだと病気で寝込んだりすると大変でしょう。そんな時に頼れる人はいますか?」

「おらんけど、俺は独り身も長いしな。そんなもん、もう慣れたわ。なんや、アンチャン。俺の心配してくれるんか?」

「心配ですよ。とても健康的な生活を送ってるようには見えないから。先週から、なんだか顔色悪いですよ。」

「まあ、確かに健康的とは言えん。最近ちょっと調子悪うてな。」

やっぱり。

おじさんはまた咳き込んでいる。


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