パドックで会いましょう
部屋の片隅には本棚があって、何冊かの本と一緒に、茶色い背表紙のアルバムらしき物が並んでいる。

あれは卒業アルバムかな?

うちの学校のアルバムも、確かあんな感じだった。

おじさんが何十年も前の卒業アルバムを大事に持っているなんて意外だと思う。

おじさんの物にしては、少し新しい気もするけど。

「今日はもう遅いし、帰りますね。」

「ああ…悪かったな、面倒掛けて。」

「気にしないで下さい。今夜はゆっくり休んで明日、必ず病院に行って下さいね。」

「アンチャン、オカンみたいやのう。俺の嫁にでもなるか。」

「冗談よして下さいよ。せめて無精髭とボサボサの頭をなんとかしてから言って下さい。」

「厳しいのう。アンチャンは面食いかぁ。」

おじさんは小さく笑った。




翌日からは仕事に追われ、定時で上がれる日は少なかった。

残業すると帰りが遅くなり、ジムには行かずまっすぐに帰宅した。


おじさんはどうしているだろう?

あれから病院には行っただろうか。

ちゃんと食事はしてるかな。

日曜日には少しでも元気になっていてくれたらいいんだけど。

もし日曜日に会えなかったら、アパートに様子を見に行ってみようか。

だけどこれまで、自分の事を話す必要はないと言っていた事を考えると、そんなお節介は迷惑がられないかとも思う。

もしおじさんが二週続けて来なかったら、アパートに行ってみよう。




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