ねぇ、好きだよ。―幼馴染に片想い―


それから、私達は制服を整えて体育館へと移動した。



式が順調に進み、3年生で最後の校歌を歌った時、皆の目には涙が浮かんでいた。

もちろん、私の目にも涙が溜まっていた。


退場が終わり、体育館を出るとせき止めていた涙が次から次へと溢れ出てきた。


校庭に出ると、皆で涙を流しながら笑いあっていっぱいいっぱい写真を撮った。


皆と話して一段落したところで、私は教室に向かった。


もう一度行きたくなったから。


誰もいない教室は静かで窓から見える桜がすごく綺麗だった。


本当にこれで最後なんだ…。
そう思うとやっぱり寂しい…。

一度止まった涙が再び溢れそうになる。


涙を止めようとすると、大好きな匂いが後ろから私を優しく包み込んだ。


「陽和。」


振り返らなくてもわかる。


「…さく…ちゃん…。」


「…寂しい?」


いつもより一段と優しいさくちゃんの声が、私の目頭を熱くさせる。


私が黙って頷くと、今度は前からぎゅっと抱き締めてくれた。


「…泣いていいよ。」


さくちゃんが優しく言うから……、


「…も、…泣いてるぅう……。」


私の目から涙が次から次へと溢れ出した。

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