可愛い弟の為に
「奥さん、不妊なのか?」

そこへやって来たのは宏伯父さん。

ああ…。
僕の頭の中で何かが弾けた。
この人の存在は昔から僕の癇に障る。

「僕が原因ですよ。妻は何もないです」

「そんなはずはないだろう。
この家で誰もそういうのはいないぞ」



…高石家にはそういう人は存在しない、ですか。
でも、残念ながら…それは僕なんです。



僕は念のために持参したファイルを取り出した。
先日のクリニックの結果だ。

それを開いて伯父さんに説明をする。

「お前が偽造したんじゃないのか?」

「こんなもの、偽造してどうなりますか?
誰が得をするのです」

全く馬鹿らしい。
そんな事をしている暇なんてない。

「それか至兄さんが下手なのか」

碧の高笑いは部屋中に響き、皆がこちらに注目する。

「上手いも下手もあるものか。
精子が0匹なのに子供が出来る訳がない」

その瞬間、僕の両親と桃ちゃんの顔色が変わった。

「…親戚の、めでたい話は僕としても嬉しい。
けれど僕はそういう話題を一生、こういう場で提供出来ないよ」

「ええ…」

「そうなの?」

ざわつく周り。

「本当に至だけの原因なのかなあ」

「宏伯父さん、いい加減にしてくれ!」

思わず、声を荒げてしまった。

「妻が悪い、というのは100%ない。
それ以上、妻を悪く言うのは許しません」

僕は鋭い目を宏伯父さんに向けた。
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