可愛い弟の為に
初戦は何でも赤旗中断するくらいのクラッシュをしてポイントが取れなかった、とは透から聞いている。

今日は2戦目。

拓海君はとても落ち着いているように思えた。

本当に高校3年だろうかって思うくらい、大人びていた。

いや、僕の隣にいる人も結構そういうところがあるな。

友達同士、そっくりな訳か。



レースは凄い展開になっていた。

僕、こういうの初めて見たけど。

凄いとしか言いようがない。

しかも弟と同じ学校の子が全日本という大きい舞台でレースをするって凄すぎる。

一体、生身で何キロ出てるんだ?

見てる方が怖い。

透も手を握りしめて見てる。

その目は光り輝いていて。

…珍しい。

興奮してる。





「兄さん、ありがとう」

帰りの車の中で何度透はこの言葉を言っただろう。

レースで拓海君は5位に終わった。

これからが楽しみなライダーだ。



「ところで透」

僕は軽く咳払いをする。

本題に入ろう。

「ハルちゃんとはどう?」

「…極々普通」

「もう、したの?」

「何を?」

透の顔が曇る。

何を聞かれているのか、これ、本当にわからなかったら…純粋又は強烈なアホだな。
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