可愛い弟の為に
7月、いよいよ夏本番という頃。

お昼の休憩が透と一緒になり、職員食堂へ。

透に病院の事を相談すると

「そうなんだ…」

と憐れみの目で見られた。

ううっ…何かアイデアを出して助けてくだされ。

「小児科の医師は何人?」

おおっ!
透が話に食い付いた!

「2人。
だけど二人とも家ではお母さんで午前診だけなんだ」

紺野よりはだいぶ小規模な病院にはなるが、それでも内科と小児科を売りにしていて、地域の開業医の中では大きい。

入院施設はないが、点滴などで使うベッドは全部で20用意されている。

子供用も10、あったかな。

「病児保育の事を考えると常勤が欲しいよね」

僕は頷く。

本当は透に入って貰いたいが。

…言える訳がない。

透は腕組をして

「うーん…
兄さんはどうしたいの?」

「内科はともかく、小児科を強化しないとね。
この市は病児保育が私立の認可保育園で1ヵ所しかしていないし。
しかも定員が3名。
シーズンになると殺到して働いているお父さん、お母さんは困っているんだよね」

その保育園で桃ちゃんは働いているのだが。

「で、兄さん、病児保育の保育士は何人?」

「専属では4人。
場合によっては保育園からフリーの保育士が入るって話にはなっている」

「で、実際の運用は?」

「再来年4月」

「あと1年8ヶ月か…」

透はコンコン、と足で床を蹴った。

「まあ、まだ先だし、来年に入ってから考えたら?」



…振り出しに戻る。
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