可愛い弟の為に
8月に入ると家に帰れば病院を経営していく上での勉強が始まった。
日勤で帰られる日はそのまま生駒家へ向かい、義父から色々な事を教えてもらう。
休日もほぼ、勉強。

生駒医院にも優秀なスタッフが多いが、実際に僕が行って離れる人もいるだろうな、と思う。

ふと、ハルちゃんの顔が浮かんだ。
確か簿記1級。
辞めちゃったけど、会社では総務。
勤務管理全般。

…ダメ元で頼んでみようかな。
どうしようもない時は。





「兄さん、その後どうなの?」

結婚式も無事に終わって落ち着いた9月。
透は心配して聞いてくれた。

「うん、色々と難航中」

「ハルも心配していたよ。経営とか大丈夫なのかって」

ハルちゃん~…。

「うん、難しい」

「…無理しないでね」

「うん」

うん、しか言えない僕。
情けない、ホント。

透も本当に心配そうに僕を見つめていた。





10月。
今月末には実家の二世帯住宅は完成する。

この頃には経営のノウハウもある程度身についてきた。
透ならもっと早くに身に付いたとは思うが。
僕の頭では無理だった。
こういう時に自分の限界を感じる。
感じるからこそ、周りに自分の手足となって動いてくれる人が欲しいと思うのだ。
しかもそれは能力の高い人になると。

…小児科の先生も中々見つからない。

透にバイトをお願いしよう。
紺野にも迷惑を掛けるけど…。
僕が週2の専門外来と当直バイトに入るから、ということで根回ししてみるか。
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