可愛い弟の為に
「この病院に来るまで、すべて自分で背負わなければいけないような過酷か環境にいたのは間違いありません。
だからその経験が今、生かされているのですが。
…透は手が抜けないタイプです。
小児科でも、透の性格を利用して楽をしている人がいるでしょ?」
「そうだね」
当番の時に電話に出なかったりね。
そうすると自然と休みの透に仕事が回ってくる。
太田先生もそれは嘆いていた。
『若い連中は透先生の姿勢を学ぶべきです。
自分たちがします、と言って先生が出て来れないようにしないと。
でも、違うんですよね。やってくれるならやって貰おう、なんて思っている。
そんな事ではいつまで経ってもスキルが上がって来ない』
僕は唇を噛み締めた。
「お兄さん、以前、透に副院長として来ないかって何気に誘われていますよね?
透はまだそれはあと数年先の話として受け止めています」
僕も2~3年後の話と思って透には以前に言ってますし。
そして透はその答えをいまだに未回答のままにしていますよ。
「私、透と一緒に住んでみて、何度出て行こうとするその手を…握り締めて止めようって思ったことか。
休日も2回に1回は何かしら呼び出しされて。
こんなにも透が行かなければいけないのかって思いました」
ハルちゃんの目からポロポロと涙がこぼれた。
「この世の中、おかしいですよね。
仕事が出来ても出来なくても要領よくこなす人ならいいかもしれない。
でも、透みたいに仕事が出来ても立場的に逃げ場のない人はどうなるんですか?
働くだけ働いて死ねっていうことですか?」
胸が痛い。
僕は目を伏せた。
「私はお兄さんと共に行ったほうがいいと思います。
透が完全に燃え尽きる前に…
だから本気で抜きに掛かってください。
お願いします、優秀な小児科医としての透を救えるのはお兄さんしかいません」
僕はバイトで夕診だけ、当分入って貰えたらなあ、って思っていたんだけどね。
ハルちゃんの訴えは尤もだ。
透が燃え尽きては意味がない。
「わかった。
でも、透は次の4月には動かないと思うけど。
それでもしつこく誘ってみるよ」
ハルちゃんは少しだけ笑顔を見せた。
だからその経験が今、生かされているのですが。
…透は手が抜けないタイプです。
小児科でも、透の性格を利用して楽をしている人がいるでしょ?」
「そうだね」
当番の時に電話に出なかったりね。
そうすると自然と休みの透に仕事が回ってくる。
太田先生もそれは嘆いていた。
『若い連中は透先生の姿勢を学ぶべきです。
自分たちがします、と言って先生が出て来れないようにしないと。
でも、違うんですよね。やってくれるならやって貰おう、なんて思っている。
そんな事ではいつまで経ってもスキルが上がって来ない』
僕は唇を噛み締めた。
「お兄さん、以前、透に副院長として来ないかって何気に誘われていますよね?
透はまだそれはあと数年先の話として受け止めています」
僕も2~3年後の話と思って透には以前に言ってますし。
そして透はその答えをいまだに未回答のままにしていますよ。
「私、透と一緒に住んでみて、何度出て行こうとするその手を…握り締めて止めようって思ったことか。
休日も2回に1回は何かしら呼び出しされて。
こんなにも透が行かなければいけないのかって思いました」
ハルちゃんの目からポロポロと涙がこぼれた。
「この世の中、おかしいですよね。
仕事が出来ても出来なくても要領よくこなす人ならいいかもしれない。
でも、透みたいに仕事が出来ても立場的に逃げ場のない人はどうなるんですか?
働くだけ働いて死ねっていうことですか?」
胸が痛い。
僕は目を伏せた。
「私はお兄さんと共に行ったほうがいいと思います。
透が完全に燃え尽きる前に…
だから本気で抜きに掛かってください。
お願いします、優秀な小児科医としての透を救えるのはお兄さんしかいません」
僕はバイトで夕診だけ、当分入って貰えたらなあ、って思っていたんだけどね。
ハルちゃんの訴えは尤もだ。
透が燃え尽きては意味がない。
「わかった。
でも、透は次の4月には動かないと思うけど。
それでもしつこく誘ってみるよ」
ハルちゃんは少しだけ笑顔を見せた。