可愛い弟の為に
「兄さんから前に何となく言われた時。
ハルと一緒に住み始めた時で、正直、かなり心が揺れていたんだ」

透は自分の胸の内を噛みしめるように、ゆっくりと話始めた。

「ただ、僕が抜けたら、小児科全般が速人一人に掛かってしまう。
太田先生はNで大変だし…。
黒谷先生は優秀だけど、この研修が終わればきっと若林先生と結婚して、先生の元へ行くと思う。
あと2人くらい、ちょっとは頑張って欲しいと思うけど…」

それは内科も一緒かも。
若手にキツく言えばヘソを曲げられる。

「速人ならやり遂げる能力はあるけれど、キツいからね、性格が。
周りが付いて来られないかもしれない」

あー…。
何となくわかる。

「しばらく様子を見ていたけど、やっぱり駄目。
とにかく人を育ててからかな」

透は僕を見て、苦笑い。
まあ、透が抜けたら紺野が必死になってどこかから優秀な小児科医を引っ張ってこい、と思う。

「兄さん、多分、そんなに遠い先の話にはならないと思う。
その時に、副院長の座は…小児科は空いてる?」



…何なら院長、する?
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