可愛い弟の為に
「僕は透以外に考えていないよ。
来てくれるまで、待つから」

透は微笑んで

「ありがとう。
取り敢えず、4月からの夕診は努力するよ。
その前に紺野に許可を貰わないとね」

こちらこそありがとう、透。

「僕は兄さんに何度助けて貰ったか…。
今度は僕がお返しをする番だよ」



…泣いていいですかねぇ。



「ち…ちょっと兄さん!?」

気が付けば、涙が自分の手のひらに落ちていた。

「透にそんな事を言われるとは思ってなかった」

手のひらで涙を拭いて、僕が言うと、

「…ずっと助けて貰っているよ。
兄さんは僕が小さいときからずっとそうだったでしょ?」

透は嬉しそうに笑って

「だから今度は僕が。
ただ、自分が考えていた予定よりもだいぶ早くなるかな。
本当はあと1〜2年は色んな症例を見て、知識を深めたかったけど、まあ紺野を出ても自分が積極的に勉強をすればいい話だしね」

お前の向学心には恐れ入る。
太田先生が仰るように、若手も見習って頑張って欲しいよ。

「それに…
病児保育も早く実施出来るようにしないとね。
働くお父さん、お母さんが少しでも安心して仕事が出来るように」

透の目が一層輝いた。
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