可愛い弟の為に
夏になった。

透がいよいよ、親に自分の進路を伝えた。

医学部のある大学を受験する、と。

両親は大満足の笑みを浮かべていた。

模試の結果を見て、僕は一瞬、目が点になる。

この予備校の模試で全国8位?

はあ?

どんなに賢いんだ。

僕の手が小刻みに震えていた。

しかも独学。

「もっと注意したらもっと取れたけど、途中で眠くなった」

そう言って笑う透。

一回殴ってやろうかと思うくらい、憎らしい。

点数の取り方を知っているんだろうな…。



小さい頃からこれでもか!というくらい、塾に通い、中高も勉強ばかり。

大学も何とか地元の国立大医学部に入り、卒業してすぐに父さんの病院に引っ張られた。
本当は大学病院に行く予定が、あの強引な父にヤラレタ。

親の敷いたレールの上を素直に走っていると我ながら思う。



透は…その点奔放だ。

中学も公立に進み、高校は何ランクも落として私立へ。

どうせなら公立に進めよ、と思ったけど。

今の高校を選んだ理由が校門前の桜並木が綺麗だった、とか一体、どういう理由だ!?と思う。



そんなアイツもいよいよ大学は医学部狙うのか。

結局、親の思うツボ。

かなり回りくどい道を行ってるが。
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