可愛い弟の為に
「…胸貸して!!」



怒り狂って言わないでください。
構えてしまいます。



そう思いつつ、僕は両手を広げる。

桃ちゃんは思いっきり胸に飛び込んでくるから僕の背中からお尻にかけて重心が掛かって、ソファーから落ちるところだった。

何とか、支えた。



「大嫌い…お父さんもお母さんも。
まるで武士の政略結婚だわ…
私、どこに行けばいいのよ。
結婚生活が辛くなったりしたらどこに帰ればいいのよー!」



確かに。
僕も今の君の状態では良い夫婦生活を築く自信がないよ。

でも…。



「じゃあ、帰りたくないようにすればいいんでしょ?」

「えっ?」

あああ…。
せっかくの整った顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃ。

「僕は努力するよ。
桃ちゃんが実家に帰りたくないって言うくらい、居心地の良い家庭になるように。
ただ、それは僕だけが頑張っても意味がないんだ。
桃ちゃんにもそれなりに頑張って貰わないと。
わかる?」

桃ちゃんは号泣しながら僕を見る。

…幼稚園児並みの姿。

「…はい、保護者様」



…本当に一言多いよ。

素直にはい、だけで終われんのか。
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